fc2ブログ

書斎談話‐お金とは‐

「先生にとって、お金とはなんでしょうか。」

先生は、眼鏡のレンズを拭く手を一旦止めて、
そのままの眼で、私を見ると、こうお答えになった。

「日本銀行発行券。」
スポンサーサイト



書斎談話‐投資と勝負‐

先生宅に着いて、一息ついた矢先に、
玄関から、先約の客人が勢いよく出てきた。

私を一目見ると、挨拶もなしに、
ふんと鼻を鳴らして、足早に去っていった。

私は開けられたままの玄関を通り、
先生の家にお邪魔した。
案内されるまで、先ほどの客人のことを思った。
なぜ、あの客人は怒っていたのだろう。

書斎に案内していただくと、
先生は心地よさそうに、煙草をふかしていた。
煙草の煙は、書斎の小窓から、外へ流れていく。
流れでた外の世界は、青々しく、生き生きとして、美しい。

先生に挨拶を済ませると、
憤っていた客人のことを尋ねた。

「先ほどのお客さまは、なんだかずいぶん、
機嫌が悪かったようですが。」
すると、先生は顔をしかめて、言った。
「あれは、癇癪もちだった。困ったもんだ。」
「どうかなさったのですか。」
「それがね、みずさん。
彼は、投資で勝つためにはどうしたらいいのかと、
聞いてきたんだ。」
「先生は、どう、お答えになったのですか。」

先生は、清々しくお答えになった。
「勝とうと力むから、君は負けるのだ、と。
そもそも、勝負なんてしないことだ。」